体験談・事例 【体験談】相続した実家を売却するまでの1年|手続き・税金・売却額のリアル
📋 この記事の目次
「実家を相続したけど、誰も住まない。どう売ればいい?」 「名義変更や税金の手続きが多すぎて、何から手をつければいいか分からない」 「実際に売った人は、どれくらいの期間とお金がかかったの?」
親から実家を相続した方の多くが、この「手続きの多さ」で最初の一歩が止まってしまいます。
この記事では、宅建士・賃貸不動産経営管理士の筆者が相談を受けた Bさん(50代)が、相続した実家を売却するまでの約1年間 を、本人の許可を得て(プライバシーに配慮し一部を加工して)紹介します。
結論を3行で。 相続した実家の売却は「遺産分割 → 相続登記 → 査定 → 売却 → 確定申告」の順に進みます。 Bさんは全体で 約1年、手続きより「兄弟の話し合い」に時間がかかりました。 税金は特例で大きく変わるため、売る前に必ず確認するのが正解です。
結論:一番の壁は「手続き」ではなく「話し合い」
体験談に入る前に、Bさんから読者へのメッセージです。
「登記や査定は、専門家に頼めば意外とスムーズでした。 本当に時間がかかったのは、 兄と『売るか・残すか』を決めるまで 。 ここを先に片付けないと、何も前に進みません」 (Bさん・50代・会社員)
相続した実家の売却でつまずくのは、多くが「制度の複雑さ」より「相続人どうしの合意形成」です。まずここを押さえておくと、全体の見通しが立ちます。
まずは無料査定で実家の価値を把握する →Bさんの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 物件 | 地方都市の戸建て(築約40年) |
| 相続の状況 | 父が他界。母は既に他界しており、相続人は兄弟2人 |
| 売却理由 | 誰も住む予定がなく、空き家のまま維持費だけがかかる |
| かかった期間 | 相続発生から売却完了まで 約1年 |
| 最終売却価格 | 約1,200万円(土地値中心) |
Bさん本人は他県に持ち家があり、実家に戻る予定はありませんでした。兄も同様。「残しても誰も使わない」という点では、早い段階で方向性は一致していたそうです。
実家を相続してから売却するまでの全体の流れ
まず、Bさんがたどった全体像です。相続した不動産の売却は、通常の売却の前に「相続の手続き」が乗る形になります。
- 1 遺産分割の話し合い 誰が実家を相続するか、売って分けるかを相続人全員で決める 目安: 1〜数ヶ月
- 2 遺産分割協議書の作成 決めた内容を書面にし、相続人全員が署名・実印で押印 目安: 1〜2週間
- 3 相続登記(名義変更) 亡くなった方から相続人へ名義を移す。売却の前提 目安: 2〜4週間
- 4 複数社へ査定依頼 空き家・築古は業者で評価が割れやすい。3社以上に依頼 目安: 1〜2週間
- 5 媒介契約・売却活動 媒介契約を結び、広告掲載・内覧対応 目安: 3〜6ヶ月
- 6 売買契約・引渡し 買主決定後、契約・決済・引渡し 目安: 1〜2ヶ月
- 7 翌年の確定申告 利益が出た場合や特例を使う場合は申告が必要 目安: 翌年2〜3月
Bさんの場合、③までで約半年、④以降の売却活動で約半年。 前半(相続の手続き)と後半(売却活動)がほぼ半々 でした。
相続が絡まない通常の売却の流れは 不動産売却の流れ完全ガイド にまとめています。あわせて読むと、どこに相続特有の手順が足されるのか分かりやすくなります。
つまずき①:兄弟で「売るか残すか」が決まらなかった
最初の3ヶ月は動けなかった
方向性は一致していたはずのBさん兄弟。それでも最初の3ヶ月はほとんど動けませんでした。
Bさん:「兄は『親が建てた家を売るのは気が引ける』と。気持ちは分かるので、強くは言えませんでした」
売却そのものへの理屈ではなく、 心理的な抵抗 が動きを止めていたのです。
「維持費」を数字で見せて合意できた
膠着状態を動かしたのは、感情論ではなく 数字 でした。Bさんは空き家を1年維持した場合のコストを書き出して兄に見せました。
🧮 空き家を維持し続けた場合の年間コスト(Bさんの試算)
固定資産税・都市計画税 = 年 約8万円
火災保険・電気/水道の基本料 = 年 約4万円
草刈り・見回りなどの管理 = 年 約8万円
合計 = 年 約20万円(使わないのに出ていくお金)
維持費の目安
約20万円/年
※金額はBさんの物件での目安です。地域・物件によって大きく変わります。
「使わない家に毎年これだけ払い続ける」と可視化したことで、兄も「なら売ろう」と納得。 感情の問題を、コストの問題に置き換えた のが転機でした。
✨ 現場での判断:話し合いは『査定額』を材料にする
宅建士として相談を受けるとき、私は「まず査定だけでも取りましょう」と勧めます。売る・売らないの議論が平行線でも、『これくらいで売れる』という具体的な金額が出ると、相続人の話し合いが一気に前に進むことが多いからです。査定は無料で、依頼したからといって売る義務は生じません。
つまずき②:相続登記をしないと売れない
名義が「亡くなった親のまま」では売却できない
売る方向で兄弟の合意ができても、すぐには売り出せません。不動産は 名義を相続人に変える「相続登記」を済ませないと売却できない からです。
Bさんは兄と話し合い、「一度Bさんの単独名義に相続登記し、売却後に代金を2人で分ける」方法を選びました(遺産分割協議書にその旨を明記)。
相続登記は2024年から義務化されている
⚠️ 相続登記は『やらない』選択肢がなくなった
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記の申請が必要で、正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ます(法務省)。過去に相続した未登記の実家も対象です。「いつか」ではなく、早めに手続きするのが安全です。
出典:法務省「相続登記の申請義務化」
Bさんは書類集め(戸籍謄本・遺産分割協議書・印鑑証明など)を司法書士に依頼。手間はありましたが、 登記自体は3週間ほどで完了 しました。
Bさん:「戸籍を親の出生までさかのぼって集めるのが一番大変でした。ここは専門家に頼んで正解でした」
相続そのものの進め方や必要書類は 相続した不動産の売却ガイド で詳しく解説しています。
つまずき③:築古の実家は査定額が業者で割れた
3社の査定額に差が出た
相続登記を終え、いよいよ売却活動。Bさんは無料の査定サービスで3社に依頼しました。築約40年・土地値中心の物件だったこともあり、査定額は割れました。
| 業者 | 査定額 | コメント |
|---|---|---|
| A社(地元中堅) | 1,050万円 | 「古家付き土地」として控えめ |
| B社(大手仲介) | 1,250万円 | 更地渡しを提案・買主層が広い |
| C社(買取系) | 900万円 | すぐ現金化できるが安い |
同じ実家でも、最高と最低で 350万円 の差。「古い家だから二束三文」と思い込まず、複数社に聞いた意味は大きかったそうです。
査定額の差がなぜ生まれるのかは、別の相談者の 複数社査定で200万円差が出た体験談 でも詳しく触れています。
「古家付き」か「更地」か
築古の実家では「古い建物を残したまま売る(古家付き土地)」か「解体して更地で売る」かの判断が出てきます。Bさんは、解体費(見積り約150万円)を先に負担するリスクを避け、 古家付きのまま売り出し、買主と相談して決める 方針にしました。
📘 用語:古家付き土地(ふるやつきとち)
古い建物が残ったまま「土地」として売り出す形態のこと。解体費を売主が先払いしなくて済む一方、買主が解体前提だと値引き材料にされやすい面もあります。どちらが得かは物件と買主層で変わるため、査定時に業者へ両方の想定を聞くのがおすすめです。
税金:特例で手残りは大きく変わる
相続した実家の売却で、最も「知っているかどうかで差が出る」のが税金です。Bさんのケースを例に、要点だけ整理します。
取得費が分からないと税金が高くなりやすい
売却の利益(譲渡所得)は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。ところが親が数十年前に買った実家は、 購入時の金額が分かる書類(売買契約書)が見つからない ことがよくあります。
取得費が不明な場合、 売却価格の5%を取得費とみなす(概算取得費) ルールがあります(国税庁 No.3258)。ただしこれだと取得費が小さくなり、その分だけ利益が大きく=税金が高く出やすいので注意が必要です。
✨ 現場での判断:まず契約書を探す
相続では「実家の押し入れから当時の売買契約書が出てきた」だけで税金が大きく変わることがあります。私は相談者にまず「購入時の契約書・領収書を探してください」とお願いします。見つからない場合でも、概算取得費5%を使えるので売却自体は進められます。
相続空き家なら3,000万円特別控除の可能性
一定の要件を満たす相続した空き家を売った場合、譲渡所得から最大 3,000万円を控除できる特例 があります(国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)。主な要件はこちらです。
✓ 相続空き家の3,000万円控除・主な要件(No.3306)
- ✓ 亡くなった方が一人で住んでいた家であること(区分所有建物でない)
- ✓ 昭和56年5月31日以前に建築された家であること
- ✓ 相続開始から3年経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- ✓ 売却代金が1億円以下であること
- ✓ 耐震基準を満たすリフォーム、または家屋を取り壊して売るなどの要件を満たすこと
⚠️ 適用の可否は必ず税務署・税理士に確認を
この特例は要件が細かく、耐震リフォームや取壊しの有無で扱いが変わります。「使えると思っていたら要件を外していた」ケースもあるため、売買契約を結ぶ前に税務署または税理士へ確認してください。要件を満たすかどうかで手残りが数百万円変わることもあります。
出典:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
税額の考え方や3,000万円控除の詳しい使い方は 3,000万円特別控除の徹底解説 にまとめています。
結果:約1年で売却完了、確定申告まで
最終的な売却の数字
Bさんは査定額の根拠が具体的だったB社と専任媒介契約を結び、古家付き土地として売り出しました。売却活動は約5ヶ月。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却価格 | 約1,200万円 |
| 仲介手数料など諸費用 | 約50万円 |
| 相続登記・司法書士費用 | 約15万円 |
| 手残り(税金は特例適用で圧縮) | 兄弟で分割 |
Bさん:「維持費が毎年出ていく不安から解放されたのが一番大きい。数字で見せて兄と早く合意しておけば、もっと早く動けたと思います」
忘れてはいけない「翌年の確定申告」
売却して利益が出た場合や、3,000万円控除などの特例を使う場合は、 売却した翌年の2月16日〜3月15日ごろに確定申告 が必要です。特例は「申告して初めて適用される」ものが多く、 申告しないと控除を受けられない ので注意してください。手続きは 不動産売却後の確定申告ガイド を参考にすると流れがつかめます。
Bさんから読者へのアドバイス
アドバイス1:まず「売る前提の査定」だけでも取る
「売るか残すか決まらなくても、査定額という具体的な数字があると兄弟の話が進みます。無料ですし、頼んでも売る義務はありません」
アドバイス2:相続登記は先に片付ける
「名義が親のままだと売れません。2024年から義務化もされたので、後回しにする理由がなくなりました。戸籍集めは専門家に頼むのが結局は早いです」
アドバイス3:築古でも複数社に査定を出す
「『古いから安い』と決めつけず、3社に聞いたら350万円の差がありました。古家付きか更地かの相談もできます」
アドバイス4:税金の特例は契約前に確認する
「3,000万円控除が使えるかで手残りが全然違います。売買契約を結ぶ前に税務署か税理士に確認してください」
まとめ:相続した実家の売却は「順番」で決まる
✓ Bさんの体験から学ぶ5つのこと
- ✓ 一番の壁は手続きより『相続人どうしの合意』。維持費など数字で話すと進みやすい
- ✓ 相続登記(名義変更)を済ませないと売却できない。2024年から義務化されている
- ✓ 築古の実家でも複数社査定で数百万円の差が出ることがある
- ✓ 取得費が不明なら概算取得費5%。まず購入時の契約書を探す
- ✓ 相続空き家の3,000万円控除は要件が細かい。契約前に必ず確認し、翌年に確定申告する
相続した実家の売却は、やることが多く見えますが「合意 → 登記 → 査定 → 売却 → 申告」という順番で1つずつ進めれば、Bさんのように着実に完了できます。まずは実家がいくらで売れるのか、査定で具体的な数字をつかむところから始めるのがおすすめです。
無料で相続した実家の査定額を確認する →よくある質問(FAQ)
Q. 相続登記をしないまま実家を売ることはできますか? A. できません。不動産は登記上の名義人が売主になるため、亡くなった親の名義のままでは売却できません。相続人へ名義を移す「相続登記」を済ませてから売却します。2024年4月からは相続登記が義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要です(法務省)。
Q. 兄弟で相続した実家は、どうやって売って分ければいいですか? A. 実務では「代表者1人の名義に相続登記してその人が売却し、代金を分ける」方法がよく使われます。誰が売主になり、代金をどう分けるかを遺産分割協議書に明記しておくとトラブルを防げます。全員の合意が前提になる点は 共有名義の不動産売却 も参考になります。
Q. 購入時の金額が分かる書類がありません。税金はどうなりますか? A. 取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」で計算できます(国税庁 No.3258)。ただし取得費が小さくなり税金が高く出やすいので、まずは実家に売買契約書や領収書が残っていないか探すことをおすすめします。
Q. 相続した実家を売ると、必ず税金がかかりますか? A. 必ずではありません。利益(譲渡所得)が出た場合に課税されますが、要件を満たせば相続空き家の3,000万円特別控除などで税額が大きく下がることがあります(国税庁 No.3306)。特例は申告して初めて適用されるため、売った翌年の確定申告を忘れないでください。適用可否は税務署・税理士に確認しましょう。